今回の記事では夏季オリンピック競技でも行われるカヌー競技がどのようなスポーツかを解説したいと思います。
私自身は水泳が大の苦手でカヌー競技については経験がありませんが、武田綾乃さんの『君と漕ぐ』を読んでからとても興味を持つようになりました。日本ではあまりメジャーとなっていないスポーツの印象のため、おそらくカヌー自体はイメージ沸くかもしれませんが、どのような競技があるのかはご存じない方も多いのではないでしょうか。
この記事を書いている今年2024年は、パリで夏季オリンピックが開催されます。カヌーは欧州や南米ではかなりメジャーなスポーツです。日本代表の活躍もですが、一流選手達の競争でオリンピックでどんなドラマが生まれるのか非常に楽しみにしています。
この記事を読んだ方が少しでもカヌー競技に興味を持ち、オリンピックなど国際大会を観戦してみたり、カヌー競技が少しでも盛り上がればと思って記事を書こうと思います。
武田綾乃さんの『君と漕ぐ』に興味があるかたは、レビューを記事にしていますので、そちらを参考にしてください!
カヌー、カヤックって何?
まずはカヌー、カヤックとはなんぞや?からです。
カヌー(Canoe)とは、カリブ先住民のアラワク族インディアンの言葉で、元々はカリブ海周辺の小型舟艇の名称です。現在では、世界各地の伝統的な舟艇を指して使われる呼称となっています。しかし、実はカヌーについてはこれ以上の明確な定義はありません。それは、カヌーという用語は、「ヨーロッパ人の用いる船舶ではないもの」という形で使用されていた歴史から来るとのことです。
カヌーと似たような言葉で、カヤック(Kayak) という呼び名も聞いたことがあるかもしれません。この両者の違いについては、国際カヌー連盟のICF (International Canoe Federation)により定義がされています。
- カナディアンカヌーはデッキを持つ舟で、選手がその中に膝をついて座り、シングルブレードのパドル(舟を漕ぐパドルが片側)で推進するもの
- カヤックはデッキを持つ舟で、選手がその中に腰かけて座り、ダブルブレードのパドル(舟を漕ぐパドルが両側)で推進するもの
つまり、乗り方に差はあるものの、明確な定義としては、パドルが片側か両側かが違いとなります。カヌーやカヤックで行う競技を総称してカヌー競技と呼ぶこともあります。
※詳細はこちらを参照ください。
そして、カヌーやカヤックとは別に、ボートと呼ばれる舟があります。その違いはなんでしょうか?その違いは、
- 舟を漕ぐ棒が固定されているか否か
- 舟の進行方向が前か後か
の違いです。ボートは、舟を漕ぐ棒が固定されており「オール」と呼ばれ、オールで舟を漕いで後ろに進みます。一方でカヌー、カヤックは、舟を漕ぐ棒が固定されておらず「パドル」と呼ばれ、パドルで舟を漕いで前に進みます。
すべてオリンピック競技ともなっていますので、この違いを頭に入れておくと、どの競技が行われているのか混乱せずに観戦できるのではないかと思います。
カヌー、カヤック競技の種類
オリンピックを例に挙げて説明します。
まず、競技の種類として、
- スプリント:流れが穏やかな直線コースでタイムを競う
- スラローム:激流を下りながら設置されているゲートを番号順に通過し、技術とタイムを競う
の二つがあります。
そして、上に説明したとおり、パドルが片方のカナディアン、両方のカヤックと2つのタイプがあります。
パリオリンピックでは、種目数は男女同じで、スプリント種目が5種目ずつ、スラローム種目が3種目ずつ行われる予定です。
パリオリンピックでの競技開催予定はこちらに記載されています。
スプリント
スプリントは、流れが穏やかな川や湖などで開催されます。乗り手の人数によって、シングル(1人乗り)、ペア(2人乗り)、フォア(4人乗り)に分かれ、距離も200m、500m、1000mが設定されています。8つの直線レーンで一斉にスタートし、決められた距離を全速力でまっすぐにこぎ続けるスタミナと技術が必要な競技です。乗り手の人数とカヤックかカヌーかによって、カヤックであればK1/K2/K4、カヌーであればC1/C2/C4と表すこともあります。パリオリンピックでは実施されませんが、5,000mで競う場合もあります。
※パリオリンピックでは、男女のカヤックシングルの200m競技は実施されません。
スラローム
スラロームは、流れの激しい川下りのコースに2本のポールがぶら下がったゲートが設置され、このゲートに触れないように通過してタイムを競います。スキーのスラローム競技に似てますね。乗り手の人数によって、シングル(1人乗り)、ペア(2人乗り)に分かれます。
スプリントと同じく、乗り手の人数とカヤックかカヌーかによって、カヤックであればK1/K2、カヌーであればC1/C2と表すこともあります。
ゲートに触れたり通過できないとペナルティとしてタイムが加算されてしまいます。最近では人工的にコースを作ることにより、より変化に富んだ難しいコース設定も可能となっており、今までよりも高い技量が必要となってきています。
パリオリンピックでは新種目として「カヤッククロス」が実施されます。4人の選手が同時にスタートしゲート通過のイベントをこなして、先にゴールした選手が勝者となる競技です。タイムアタックではなく選手同士の競り合いとなるため。誰が一番優勢なのかが一目瞭然となる競技となります。
世界大会のカヤッククロス男子決勝の動画を添付しておきます。グルーっと一回転してバーをくぐったりと、いかに激しい競技かがわかるんじゃないかと思います。
カヌー、カヤック競技の強豪国はどこ?
カヌー競技はイギリス発祥の競技であるため、欧州で人気が高い水上スポーツです。
強豪国としてはまずドイツが挙げられます。背が高くフィジカルが強いイメージがありますが、施設が充実しており、練習環境が非常に整っているからこそ実績を残せているとも言えます。また、ドイツ国内では非常にメジャーなスポーツでもあるため、競技人口も多いです。
ハンガリーも昔からカヌー先進国として活躍してきた強豪国の一つです。ハンガリーにはなんどカヌーのクラブチームが80もあり、10代前半の子どもが幼い頃からカヌー競技に親しむプログラムがあるなど、カヌー教育が非常に充実しています。
上記2国以外にも、東京オリンピックでは、欧州としては、スペイン、デンマーク、ポーランド、イギリス、イタリア、スロバキア、チェコ共和国、スロベニアがメダルを獲得しています。欧州以外では、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル、中国がメダルを獲得しています。
カヌー、カヤック競技での日本人の活躍について
ヨーロッパや南米の国々と比較すると、アジアの国々や日本は、まだ歴史が浅く足元にも及ばないという印象です。その中で中国はさすがというべきで、さまざまなスポーツを国をあげて強化してきた結果として、アテネオリンピックや北京オリンピックからメダル獲得をしています。
日本でも最近はカヌーを楽しむ人が増えてきており、指導者も育ってきており、リオオリンピックでは羽根田卓也選手がスラローム男子カナディアンシングルで銅メダルを獲得し、日本人初のカヌー競技メダリストとなりました。
パリオリンピックには、羽根田卓也選手だけでなく、男子:田中雄己選手と女子:矢沢亜季選手が世界選手権で五輪出場枠を獲得し、五輪代表に決定しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?まだ日本ではメジャースポーツとはなっていないカヌー競技について解説をしました。これをきっかけに今年行われるパリオリンピックでのカヌー競技に興味を持っていただいたり、他の大会を観戦してみたりと、日本のカヌー競技が盛り上がるきっかけの一つとなれば幸いです。
日本としては世界のレベルにはまだまだ追いついていない競技ではあると思いますが、これからどんどん盛り上がっていつの日か日本人が金メダルを獲得する日を夢見たいですね。